筆者はADHD診断を受けた夫がいるのですが、彼は4年前にサラリーマンを辞めて自営業(個人事業主)として生計を立てています。その際、一時夫を妻が扶養に入れていた時期があるので、参考になればと思い経験談をお話しします。
発達障害者にサラリーマンは向いてない?!

世の中にはさまざまな就労形態があるのですが、日本の方が概ね知っているのサラリーマン・会社員ですよね。ここで、サラリーマンのメリットを考えてみましょう。
サラリーマンのメリットとは?
- 毎月給与をもらえるので、キャッシュフローが安定する
- 自分の仕事だけすれば、面倒な納税などは会社がやってくれる
- 自分にスキルがなくても会社が仕事をくれる
- 社会保障が最強に手厚い(年金、保険、育休手当金など)
逆に、サラリーマンのデメリットもありますよね。
サラリーマンのデメリットとは?
- 勤務時間、仕事内容、場所などに自由がない
- 会社の規則に従わなければならない
- 人間関係が複雑
- 周りとある程度合わせる必要がある
- 朝、日中の仕事が多い
- 歩合制の仕事以外は、個人の頑張りが反映されにくい
- やりたいことが出来ない
つまりサラリーマンという働き方は、集団組織に所属することができて、人間関係が構築でき、会社に求められたら柔軟に受け入れて対応できるのであれば良いのですが、自由が欲しかったり人間関係を気付きながら組織として動くことが苦手な発達障害の方には非常にハードルが高い、とも言えるでしょう。
障害者手帳を取得して、障害者雇用で配慮を受けながら働くこともできますが、それでも組織に所属する以上全てを理解してもらうのは極めて難しいでしょう。
筆者の夫はまさにサラリーマンが合わないタイプのADHDで、締め切りは間に合わないし、思いつきで動いてしまうし、言葉でうまくコミュニケーションが取れないので、いつも上司に叱責されていました。発達障害から二次災害的に適応障害状態になってしまったのです。
これをきっかけに、夫婦で相談して夫はサラリーマンを辞めて個人事業主として独立することになりました。
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サラリーマンの妻が、個人事業主の夫を扶養に入れるメリットとは

脱サラして個人事業主となったADHD夫ですが、ここで問題が月々の年金と健康保険料の支払いです。
個人事業主になると国民健康保険に入って毎月自分で納付する事となるのですが、最低でも合計で毎月3万円ほどは払う必要が出てきます。事業が軌道に乗るまでは毎月の出費を少しでも減らしたいものですが、ここで使えるのが扶養制度なのです。
日本では会社員の場合、第3号被保険者という制度を使って扶養に家族を入れることが出来ます。ほとんどの場合は専業主婦と子供を想定しているのですが、扶養に性別の制限はありませんから、夫がサラリーマンの妻の扶養に入ることはなんら問題がありません。そしてそのメリットをまとめます。
サラリーマン妻が個人事業主夫を扶養した時のメリット
- 夫が年金、保険料を収めなくて良い(毎月最低約3万円節約)
- 会社によっては、毎月家族手当が会社からもらえる(筆者は毎月17,500円もらっていました)
- 妻の所得税の節税対策となる
要するに、
- 年金、保険料免除で月3万円✖️12ヶ月=年間36万円
- 家族手当 月17,500円✖️12ヶ月=年間21万円
扶養に入れなかった場合と比べると、扶養に入れたことで合計年間57万円も、手元に残るお金が増えるのです。
もちろん、できることならサラリーマンのうちから個人事業を走らせて軌道に乗せておいて、自分で苦労なく支払えるくらいにしておくことが最善ではありますが、事業が軌道に乗るまでの保険として妻がサラリーマンなのであれば個人事業主の夫を扶養するというのは家計の面ではメリットが大きいと言えるでしょう。
サラリーマン妻が個人事業主の夫を扶養に入れる方法と注意点

手続きは会社に問い合わせを
サラリーマン妻が個人事業主夫を扶養に入れる手順ですが、基本的には会社の総務に問い合わせをしてみてください。必要な書類や手続きを教えてくれるはずです。
筆者の場合は大企業なので、下請けの事務の会社の方に問い合わせをして会社指定の書類書いたり、夫の確定申告の書類を提出したりしました。程なくして家族手当の振り込みが始まり、そして夫の保険証を受け取ることが出来ました。
会社の書類上、上長のハンコが必要だったので多少気まずさを覚えながらも上司にサクッと事情を説明したところ、特に突っ込まれることもなく、すんなりハンコをもらうことが出来ました。
扶養1. 所得税上の扶養
これは妻の所得税の節税になる、ということです。また、所得税法上の扶養に入っていると、家族手当の対象となります。扶養の範囲となる合計所得の算出式は以下の通りです。
売上-経費-青色申告特別控除=合計所得金額が38万円未満の場合
この期間は、1月1日から12月31日までの1年間となります。
要するに、年の半ばまでサラリーマンで途中で脱サラしたようなケースは所得が38万円以上あるでしょうから、所得税の扶養に入れることはできません。
青色申告特別控除については、国税庁の公式情報を確認してくださいね。
株の売却益や配当がある場合、最寄りの国税庁に問い合わせしよう
株を持っていて売却したり、配当益を受け取っている場合に所得としてみなされるのかどうかわからなかったため、筆者の夫は最寄りの国税庁に問い合わせをしました。税金のことですのでここで間違っていると非常によろしくないため、最新の正しい情報は国税庁への問い合わせをオススメいたします。
扶養2. 健康保険(年金、医療保険)上の扶養
専業主婦の方のパートでもよく言われる130万円の壁はこちらの話になります。つまり、合計所得が130万円未満であれば扶養に入れることが出来ます。合計所得の算出式は以下の通りです。
売上金額-経費-青色申告特別控除=合計所得が130万円の場合
健康保険の扶養の期間は、サラリーマンを辞めた時点から365日日割りで換算されます。例えば5月までサラリーマンで、6月から個人事業主となった場合は、6月から翌年の5月までとなります。もし途中で所得が130万円を超えそうな時はすぐに打ち切らないと、1年経ってから後追いで保険料を納付することになりますので、ここは要注意です。
青色申告特別控除については、国税庁の公式情報を確認してくださいね。
株の売却益や配当がある場合、健康保険の扶養は要注意!
ちなみに、株を持っている場合は売却益・配当利益に注意してください。
ちなみに個人事業主の際、事業収入と株での損益通算は行われません。
つまり事業で合計収支が扶養金額内でも、株の売却益や配当金が130万円を超えてしまったら、扶養に入れられない、ということです。
扶養範囲を超えていた場合は遡って返納となるため注意!

個人事業主の夫をサラリーマン妻が扶養に入れることは合法ですし問題もないのですが、扶養範囲をうっかり超えてしまっていると遡って返納が必要となるため注意しましょう。
筆者のADHD夫は発達障害の特性もあり、年間の収支計画がうまくできなかったり、話を忘れたりしてしまうため、夫婦で相談して毎月お金の確認をお互い行い、お金について勝手に暴走しないようにお互い管理するようにすることで、うっかり扶養範囲を超えることは防ぐことが出来ました。
サラリーマン妻が発達障害の夫を扶養に入れたデメリットとは?
最後に、サラリーマン妻の筆者が個人事業主となったADHDの夫を扶養に入れた経験から振り返る、意外なデメリットをまとめてみます。
ADHDを持つ個人事業主夫を扶養に入れたデメリット
- ADHDあるある、夫がやる気が起きなくてニート化する
- 妻と夫のパワーバランスが崩れる
- 世間的に恥ずかしさがある
特にADHDの場合ですが、追い詰められてピンチにならないと火がつきません。よって、扶養に入れてお金や保険の不安がなくなってしまったことでいつまでも仕事に本腰を入れるモチベーションが湧かずに1年ほどニートのようになってしまいました。筆者がくたくたに疲れて帰ってくると夫が夕食を作ってくれていたのは助かったのですが、筆者は男性にはやはりバリバリと働いて女よりは稼いでほしいと思う方なので精神的に好ましいものではありませんでした。
また、妻が夫を扶養に入れるというのは日本では極めて稀なケースであるため、妻としては夫のことを男性として頼り甲斐があるように感じられなくなってしまいました。
最後に、やはり女が男を扶養に入れるというのは、世間的には恥ずかしさはあります。特に日頃の話で自分から話すような場面はないのですが、会社で上司に扶養申請書類の承認をもらったり、総務の方に問い合わせをしたときなど、なんとも言えない恥ずかしさもありました。
以上、メリット・デメリットを見て、必要であれば扶養に入れて様子をみてもいいかもしれませんね。
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